白河手打中華そば とら食堂 福岡分店(六本松)

 昭和44年創業、福島白河の名店「とら食堂」がついに12月18日福岡に出店した。とら食堂は支店を持たず、とら食堂で修業して親方の竹井さんに認められた人が分店という形で暖簾分けする形を取るが、福岡分店もとら食堂で長年修業を重ねたお弟子さんが店長になり、運営は竹井さんと旧知の間柄である一風堂の河原成美さんが請負い、力の源カンパニーの系列会社が担当する。

 あのとら食堂の味が福岡でも出せるのか。とら食堂の中華そばは、鶏の旨味を引き出した澄明なスープにチャーシューの旨味を閉じ込めた醤油ダレ、そして手打ち手揉みの多加水縮れ麺という、福岡の豚骨とはすべてが真逆の設計になっている。そしてそれを再現するには職人の長年の経験や技術が不可欠なのだ。

 結論から言うならば、それは杞憂に終わった。いや、何なら白河本店に勝るとも劣らないクオリティと言っても良いだろう。それは指導しているとら食堂店主の竹井和之さんですら「白河よりも美味いんじゃないか」と言っていたほどである。それはお世辞でも社交辞令でもなんでもなく、いくつかの明確な理由があった。

 まず使用している素材の質が白河と福岡では違う。白河では名古屋コーチンをはじめとしたいくつかの鶏を使っているが、福岡でははかた地どりの他、いくつかのブランド鶏をブレンド。さらに竹井さんが驚いたのがタレに使う昆布。料亭で使うレベルの高級な昆布を使っているそうで、竹井さん曰く「これを白河で使ったらラーメンの値段を上げなければならなくなる」とのこと。このスープの旨味がとにかく深い。鶏のしっかりとした旨味と醤油ダレがしっかりと融合している。油を足さずに自然に寸胴から出た鶏油が馴染んでいる。

 そこに踊るような食感の手打ち麺の魅惑の食感。水回しからすべての工程を手作業で作る、正真正銘の手打ち麺は、本店で長年修業した店長が手際良く仕上げていく。ちゅるんちゅるんというような、それでいて食べ応えも十分にあって。麺の量は白河本店より若干少なめの150g(本店は180g)だが、平均100gの博多ラーメンを食べ慣れている人に合わせてのことのよう。それでも1.5玉分あるので福岡では十分なボリュームだろう。

 そしてもう一つ、とら食堂を語る上で外せないのが炭火で燻製したチャーシュー。これも白河本店と同じオリジナルの燻製機を使って店内で燻している。周りに薫香をまといながら、低温調理されてしっとりと柔らかな食感も完璧に再現。このチャーシューも福岡ではあまり見られないものだろう。チャーシュー麺が人気なのも頷けるというものだ。

 麺、スープ、チャーシューなどの製法はすべて本店と同様。現在は品質の維持、向上を第一に考えているそうで、一日およそ150食限定。ちなみにオープン初日の日曜は昼の部は12時過ぎ、夜の部は19時頃で完売になったとのこと。さすがに平日だとそうはならないだろうが、時間内に売り切れ終いの可能性は高いので余裕をみて訪問した方が良いだろう。


とら食堂 福岡分店
福岡市中央区六本松4-9-10
市営地下鉄七隈線「六本松」駅より徒歩3分

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