山路力也

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豆皿中華Q(六本松)「全トロ麻婆麺」690円

 再開発が進む六本松エリアの路地裏に2018年3月オープンした話題の中華料理店。今泉のバー「AFTER THE RAIN」による新業態。本格的な中華料理を小ポーション(豆皿)で楽しめるとオープン早々から話題を集めている店で、一度夜にはお邪魔したことがあるが、最近になってランチを始めたと聞き行ってみた。 カフェのようなスタイリッシュで明るい店は、どことなく中国の食堂のような雰囲気もある。フロントに大きく「Q」の文字が染め抜かれたカラフルなTシャツを着た若いスタッフが店に立つ。ランチは麺メニューが3種類あるが、お店の一押しは「全トロ麻婆麺」。他に「豆乳・豆苗 担々麺」「シビれる汁なし担々麺」があり、半チャーハンや豆皿提供の中華メニューも数品ある。メニューなどを眺めていると「全トロ麻婆麺」に「半チャーハン」というのが鉄板のようなので、そこはお店の言う通りに従ってみる。 全トロとは何なのか。通常、麻婆麺の場合はベースに普通のラーメンスープがあり、そこに麻婆の餡が乗せられることが多いが、この店の場合は全部がトロっとした麻婆スープという意味なのかな。麺の上にたっぷりとかかっているトロトロの麻婆豆腐は、程よい辣味で辛いのが苦手な人でもいけそう。爽やかな麻味も出しゃばり過ぎず、甘味の使い方も上手で、いい感じの「本格派感」が出ている。上に乗った揚げ玉ねぎのアクセントも食感、ビジュアル共に良い。特に秀逸だと感じたのは餡の粘度。後半に片栗が緩んで来て、最後はスープになる絶妙な粘度なのだ。汁無しのような汁あり。汁ありのような汁無し。この変化がなかなか楽しい。 ただ、チャーハンは可もなく不可もなく、普通の中華屋のチャーハンで取り立てて感動はない。おとなしい味付けのチャーハンなので、単体として食べるにはまったく不満は無いのだけれど、麻婆餡をかけると麻婆の味に負けてしまって存在感が薄れてしまう。調味はもちろんだが、たとえば具材を大きくするとか食感的な変化もあると、よりチャーハンの存在感が出て楽しめるのかも知れないなぁ。

元祖ラーメン 元長屋(天神南)「ラーメン」500円

 2018年3月20日オープンの新店。屋でも家でも家2でもない新たな「ガンソ」が今泉天神南エリアに。場所は西鉄線路沿い、大砲ラーメンの斜向い。いかにも「ガンソ」らしいファサードだが、国体から視認性が低いのがネガティヴファクター。こちらは屋でも家でも働いていた事がある人が関わっている模様。同時期に姫路にも「元祖ラーメン長浜 元長屋 姫路総本店」という同じような店名の店がオープンしているが、どうも関係はなさそうだ。 看板、メニュー構成、券売機、店内の様子、お茶、そして丼などのディテールは確かにガンソなのだが、細かなところでガンソらしくない部分も少なくない。まずスープの濃度が比較的しっかりと出ている。骨の旨味とまでは言わないものの、乳化した感じが他のガンソよりも深みがあるような。肉も形がしっかりしていて、味付けも驚くほどに角があって醤油っぽい。麺は他の店と較べるとやや細めでボリュームもやや少なめ。そしてなんとお茶の色がしっかりと出ている。壁に「あぶない!」のプレートがないのがとても残念。 このあたりに夜中までいて、じゃあここで締めるかと聞かれたら個人的には微妙。明け方タクシーに乗って長浜まで行くのがバカみたいで楽しいわけで、こことか川端で食べたいとはあまり思わないのだ。ただ観光客とか特にインバウンド関連の方たちにはニーズがあるようにも思う。

博多くまちゃんらぁめん(赤坂)「クリーミーとんこつ」620円

 2018年4月27日にオープンした新店。神松寺の「油山とんこつ研究所 くまちゃんラーメン」が「博多一幸舎 大名本家」の跡地に移転とのこと。残念ながら神松寺時代には未訪なので、今回がまっさらな初訪となる。一幸舎時代の真っ赤でインパクトのあるファサードと、店が見えるよりも早く香ってくる豚骨臭がなくなって、可愛らしい雰囲気の店になった。神松寺時代の「とんこつ研究所」の文字は外看板などに今も書かれている。 カウンター越しに見える寸胴からは骨が顔を出し、強火でガンガン炊き上げている様子が分かる。営業用のスープはあらためて小鍋で温めて熱々にして提供。泡が表面を覆ったスープは、クリーミーの名前の通り濃厚ながらも口当たりが柔らかくまろやか。気になったのは塩度で、かなり控えめで元ダレが弱いのか計量ミスなのかそれとも自分の舌がバカなのか、やや味がボヤけた印象。麺は慶史の細ストレート麺をカタで。平ざるではなくテボを使っている。具はバラチャーシュー、キクラゲ、葱と過不足なく。 日曜で混んでいたのもあるのだろうけれどオペレーションがぐだぐだで、オーダーの前後も見受けられた。私の前に出された人が替え玉も食い終わって楊枝咥えた頃に私のラーメンが出て来た。もしかしたらオーダー忘れられていたのかも。

KOMUGI(別府)「トリニボ+煮干し油」650円

 2018年2月26日オープンの新店へ。青い色の壁面にアルファベットのチャネル文字というファサードはラーメン店というよりもカフェや美容院のようでお洒落な雰囲気。こちらは宮若市の「王ちゃんラーメン」が移転リニューアルとのことだが、恥ずかしながら前店を知らなかったので先入観ナシまっさらの初訪となる。混ぜそばが推しのお店のようだが、やはりラーメンの方をセレクトしてしまう。 澄明で綺麗な鶏清湯にほんのり煮干しが香る。東京だとトリニボと言ったら何となく鶏白湯にガッツリ煮干しが効いたラーメンを想像するが、それとはまったくベクトルが異なるトリニボの解釈が楽しい。塩度も控えめで角がなく丸い味わいは万人に愛されそう。何気に揚げ白髪ネギがテクニカルポイントになっていて、自家製のストレート中細麺もマッチしている。麺の茹で加減、食感も良くアシも遅め。チャーシューも豚バラ、肩ロース、鶏と3種類も乗って600円は安い。福岡のラーメン市場の難しさを感じさせる値付けだと思う。東京だったらあと150円乗っていても普通に許されるだろう。 味変アイテムの煮干し油は背脂も混ぜ込んでいて煮干しも強く、一気に表情が変わる。ただ提供の仕方がややスマートさに欠けるので、何かワンアイデアあるとより良いのだけれど。そこだけがちょっと惜しいかな。ワンオペで丁寧に作っているので提供時間はすこぶる遅いが、オペレーションはいずれ改善されていくことだろう。また足を運んでも良いかな、と思わせるポテンシャルがある新店だ。かと言ってまぜそばはやはり興味がないのだけれど。

らーめんおいげん(赤坂)「豚骨ラーメン」600円

 国体道路沿い、警固交差点近くに2013年オープンした豚骨ラーメン店。以前は西区の人気店「西谷家」によるセカンドブランド店「伊都商店」だったが、そこを任されていた店主がそのまま店を継ぐ形で独立した店だ。オープンして早々に一度お邪魔したことがあるが、数年振りに再訪してみた。 西谷家といえば濃厚ド豚骨で知られる久留米ラーメン魁龍の流れを汲む店。店主の津曲さんも西谷家の味が好きでラーメンの世界に入った人なので、おいげんも最初はかなり濃度の高いラーメンを出していた。しかし地元の人たちの好みと乖離があったために、豚の頭と豚足で取った若いスープと、スープを抜いたガラに豚足を足して取った濃厚なスープを一対一でブレンドすることで、ややバランスをライトにして支持を得た。とは言ってもかなりしっかりと濃度があるスープになっている。平打ちの細麺は小倉の老舗「安部製麺」にオーダーしたオリジナルを使用。炙ったチャーシューの香ばしさが食欲を喚起させる。 人気のサイドメニューだという半チャーハンも安定の美味しさ。奇をてらうことなく、皆が好きなものをより上質に。この場所は比較的店が長続きしない場所だったが、おいげんはいつまでも地元の人たちに愛されていくことだろう。

博多ラーメン しばらく本店(西新)「ラーメン」540円

ラーメンカナデヤ(大橋)「トンコツ並」600円

 福岡に頻繁に来ているとはいえ、やはり他所者にとっては天神や博多は馴染みがあるが、それ以外のエリアとなると直感的に動き辛い。この日は手薄になりがちな大橋エリアの大型宿題店へ。オープン時からいつか行こうと思っていた店だったが、2011年オープンと6年も経っていることにビックリ。 卵を溶かした新感覚の佐賀ラーメンやトマトを使ったラーメンなど、この店ならではの気になるメニューがたくさんあるのだが、初訪なので基本の「トンコツ」を。サラッとしていながらも豚骨の甘みや香りをしっかり感じさせる上品なスープ。旨味の下支えに野菜や魚介出汁も使っているようだが、基本は良質な豚骨スープ。そこに低加水細ストレート麺を合わせている設計は、飛び抜けてインパクトがあるわけではないが、誠実に丁寧に作っている上質な一杯。盛り付けをみてもその誠実さが感じられる事だろう。良いラーメンは良い顔をしているものだ。 おそらくご夫婦で営まれているのだろうが、奥様の接客が過不足なく素晴らしい。卓上の調味料やレンゲの向きなどもしっかりお客様目線。細かなところに神経が行き届いている。こういう痒いところに手が届くサービスって出来そうでなかなか難しい。オープンしてすぐは出来るかも知れないが、6年経ったお店でモチベーションをキープして、こういうスタイルを続けているのは大変な事だと思う。同業者の方はこの店に来れば見習うべきポイントがたくさんあるはず。僕は20分くらいの滞在で軽く30ヶ所は見つけることが出来た。ホント大橋エリアはなかなか来ないのだけれど、ココはまた訪問したいな。

無邪気 本店(七隈)「ラーメン並+海苔増し」640円

 学生街である七隈エリアで一人勝ちの様相を呈している無邪気。こちらは東京新中野の武蔵家系列である武道家出身の店ながら、福岡では家系とは敢えて謳わず、オリジナルの豚骨醤油ラーメンで人気を博している。2号店の博多無邪気は既食だが、本店はこの日が初訪問となる。 しっかり丁寧に取られた豚骨鶏スープに、九州醤油の甘さが際立つカエシが合わせられる。麺は家系的なもっちりとした食感の太麺なのだが、低加水細麺で定評のある地元福岡のトリオ製麺によるもの。この店を家系と呼ぶか否かはこのスープをどう捉えるかに尽きる。やはり家系を食べ慣れている人間からすると、この甘さはかなり個性的。私は嫌いではないのだが、やはり中盤から後半に飽きが来てしまう。家系ラーメンを意識するとあまりにも甘過ぎる。ここに出来れば家系のカエシを合わせたいと感じるのは、家系ラーメンを食べ慣れているからなのだろうな。 この甘さを感じさせる豚骨醤油は、福岡だと西新の海豚やとか中洲の恭やなどにも通じるものなので、福岡の人には受け入れられる味なのだろう。それを余所者がごちゃごちゃ言うのは野暮というものなのだろうが、せめて海苔の判を大きくして欲しいのと、追加トッピングで構わないのでホウレンソウも準備して欲しい。間違いなくこのラーメンにはホウレンソウが合う。

ラーメン花道(七隈)「レモンラーメン」600円

 福大生がうごめくラーメン激戦区、七隈四つ角からちょっと入ったところに11月オープンしたばかりの新店。 花道という店名は既視感があって、なんだか新店に感じないところが不思議。しかし、当然店の中も外も綺麗な作りになっていて、若いご主人がお店に立たれている。 純然たる豚骨ラーメンというよりは、出汁感がより強調された進化した豚骨ラーメンを提供している印象。中でもおそらく看板メニューになっていくであろう一杯が「レモンラーメン」だ。同じ福岡市内の「行徳家」も含め、レモンの入ったラーメンはこれまでに何度か食べた事はあるが、白濁豚骨スープというのは初めての経験ではないかと思う。 恐る恐る食べてみたら、意外にもマッチしていて驚いた。豚骨スープがさっぱりまろやかになり、中盤から後半にかけての味の変化が清湯のレモンラーメンより顕著で楽しい。落ち着いて考えれば豚骨醤油ラーメンに酢を入れたりするものね。麺は低加水細ストレート麺で、パッケージは博多ラーメンそのもの。豚骨にレモン、悪くない組み合わせだ。 ここからはこの店云々ということではなく「豚骨レモンラーメン」というものを今一度客観的に考えてみると、清湯レモンラーメンよりもベースの豚骨スープをもっと丁寧に取る必要があるのかも知れない。というのも、この店のスープ自体も別段臭みもないし綺麗に取れていると思うのだが、レモンの浮かんでいる近くのスープを啜るとそれまで感じなかった豚骨臭がフワッと感じてしまい、それによりせっかくの爽やかな味わいが半減してしまうのだ。 おそらくスープの取り方によってはこうならないんじゃないか。あるいはそもそもレモンと豚骨スープなら全てこうなるのか。レモンではなく別の柑橘類ならどうか。などなど、色んな可能性を提示してくれた花道のレモンラーメン。つくづくラーメンは面白い食べ物だなとあらためて感じることが出来た。